る中学へ入学する。そういう中学があったのである。
 悪縁が切れたから、改心しようと思って、改心したツモリであったが、どこにも行きがかりというものがある。学問はできないけれども、スポーツは万能選手で、たのまれてチョロ/\と競技会へ出場すると、関東大会でも優勝するし、全国大会でも優勝する。九州の落武者の大ヨタモノの相撲の選手が糞馬力で投げてみたって、十二ポンドの砲丸が七八|米《メートル》ぐらいしか飛ばないものだ。私がヒョイと投げると十一米ふッとぶのである。柔道すると、大ヨタモノがコロ/\私にひッくりかえされる。いくら学問が出来ないたって、こういう連中の中では頭角を現すから、私は改心したツモリであったが、いつのまにか、大ヨタモノの中央に坐っていた。
 九州の落武者の多くは、壮士的ではあるが、ヨタモノとは違う。彼らは概ね自活していた。新聞配達とか、露店商。これは今でも学生のアルバイトだが、当時はそうザラではない。夜中にチャルメラ吹く支那ソバ屋もいたし、人力車夫、これがモウケがよかったようだ。雨が降りだすと、ソレッと親方から車をかりて、駅や劇場へ駈けつける。雨天だけの出動で一ヵ月生活できるから、
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