である。
 ともかく、競輪というものは、フォーカスで本命ばかり買っても、全然ダメ。復で本命を買っていても、二度以上は外れるから、やっばりダメ。マトモに買っては、目下のところ絶対にもうからない。
 現在のところでは、三万円をフトコロに、穴狙い屋の少い競輪場へ出かけて、大穴専門にやるのが、むしろ最も確実なのである。なぜなら、半数ぐらい番狂わせが出るから。そして、この番狂わせが八百長かどうかは分らないが、八百長でも有りうることは、私が今まで述べたところで、ほぼ判じうるだろうと思う。

          ★

 しかし、私が話を交した三人の選手のヒタムキな向上心や、彼らによって物語られた選手の私生活について考察しても、選手自体は概ね勝負一途の、競輪に青春を賭けた単純で名誉心にもえたった連中で、選手の腐敗ということは、きわめて一部分の現象でしかないようである。常に新人が登場して、それが勝敗以外に余念のない十七、十八、十九ぐらいの若者ぞろいであるから、その競争心は熱烈であり、練習も亦猛烈だ。彼らの朝晩の練習は、真剣そのものである。だから、追われる方も油断ができず、酒色に身をもちくずせば早晩破滅す
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