々に押しつけられるものは彼らの無智蒙昧な誤算だけで、しかもそれを糊塗するに、言論や批判の自由を断圧して、身勝手な割当てを強要するだけのことであろう。
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私は敗戦後の日本に、二つの優秀なことがあったと思う。一つは農地の解放で、一つは戦争抛棄という新憲法の一項目だ。
農地解放という無血大革命にも拘らず、日本の農民は全然その受けとり方を過ってしまった。組織的、計画的な受けとり方を忘れて、単に利己的に、銘々勝手な処分にでて、あれほどの大革命を無意味なものにしてしまったのである。ここには明かに共産党や無産政党の頭の悪さがバクロされており、人の与えた稀有なものを有効に摂取するだけの能力が欠けていたのだ。
戦争抛棄という世界最初の新憲法をつくりながら、ちかごろは自衛権をとなえ、これもあやしいものになってきた。
吉田首相は官吏の減少を国民負担の第一条件と断定しながら、軍備を予定しているとしたらツジツマの合わぬこと夥しいではないか。
軍人一人と官吏一人では、国民の負担の大きさが違う。軍人一人には装備という大変な重荷がついている。原子バクダン時代に鉄砲一つの兵隊なら、な
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