相をアッサリ保守反動ときめつけるけれども、彼の直截簡明な判断には見るべきところがあり、正月ごろ発表した談話に、官吏を減らせば国民の負担が軽減する。まず官吏を減らすのが第一だ、というのは、共産党が天下をとったにしても、日本の国情としては、そうせざるを得ないのが当り前だ。軍人だの官公吏というもの、又事務系統を減らして、生産面の各部門を拡充し、それも主として貿易の生産面にふりむける以外に生活水準を高める実質的な方法はあり得ないはずだ。
 それとも共産党の場合には、彼らが天下をとったアカツキ、共産諸国の協力や援助をうけうるものだと予定しているとしたら、甘いというか、悲劇的な頭の悪さであろう。人のフンドシで相撲をとるのは日本古来の特技でもあった。戦国時代の興亡は主として人のフンドシを当にして行われ、昭和の軍部はドイツのフンドシを当にして失敗してしまった。
 今日、右翼再興の気運も、概ね人のフンドシを当にしての算用から割りだされた狡猾で頭の悪い田吾作論理の発展のようであるが、こういう手合いの軽率で虫のよすぎる胸算用は蒙昧きわまり、悲劇そのものでもあろう。
 要するに、左右いずれの天下となっても、我
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