る思想を弾圧すべからず、と考えていた。現に、そう考えているのである。無政府主義だろうと、共産主義だろうと、自由に流行させるにかぎる。なぜなら、それを選び、批判し、審判するのは、国民の自由だからである。
ところが、現在の日本共産党は、そういうわけにいかない。
徳田中尉、野坂中尉という指導者が上にあって、だいぶ下の下になるが、除名された中西伍長という参議院議員など、さらに末端の兵卒に至るまで順序よく配列されているわけだ。
中西伍長が綿々と述べたてるところによると(週刊朝日一月二十九日号)党中央というものを党員が批判することができない。批判すると、反動だということになる。たまたま中西伍長が独自の見解をのべて、それを党中央のオエラ方に批判してもらおうと思ったら、徳田中尉はカンカン怒って、伍長が二三分喋り得たのに対し、中尉は二三十分喋りまくって吹きとばしてしまったそうだ。又、野坂中尉は白い目をギラリと光らせて一睨みくれただけであったが、それは、若造め、生意気云うな、という意味らしかった由である。
中西伍長の独自の見解は、オエラ方にきいてもらえないばかりでなく、アカハタも前衛も彼の論文をボ
前へ
次へ
全24ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング