ろはない。
結婚生活というものは、屁理窟の世界ではないのである。思想が違うから、とか、人種が違うから、とか、そういう一般論では割りきれないもので、男女二人の関係は、いつの世に限らず、男女二人だけの独特の世界だ。各人の個性と個性によって均衡を保つか破れるかする世界で、つまり二人だけで独特の世界を生ずるもの、決して公式によって割りだすことができない。だいたい男女関係が公式で算定できるなら、万事占師にまかせてよろしく、小説家など存在する必要はないのである。
立場も思想も育った環境も違う二人が結婚することはザラにあることだが、恋愛とか結婚は先入主を持つ必要はないのである。二人の愛情が結婚まで延長せざるを得ない思慕によってつながる故に、結婚するというのが、結婚の第一義だ。
私に一番不可解なのは、政党の違う男女が結婚できないときめこんでいる人々の頭で、そんなルールをどこから見つけてきたのですか。
夫婦円満というのは、アナタの云うことゴモットモ、ゴモットモ。バカバカしい。ゴモットモが円満の証拠ではないです。
各人独立独歩の男女なら、みんな各々自ら独自の見解があり、ゴモットモでは、すみませんよ。どこの家庭にも論争のあるのは当然で、ゴモットモの方が、どうかしているのである。
独自の見解をまげる必要はないではないか。あらゆる意見が同一でなければ夫婦とは申されないというなら、先ず夫婦というものは、この世に有りうべからざるものだと考えてマチガイはない。
小さな好みの問題ではなく、両人ともに政治家であり、表看板の政治的見解が相違していては致命的だという見方が多いのであるが、だいたいに於て見解の一致ということは一方を奴隷として見る場合にのみ有りうることで、理知というものは、各人の立場の相違というものを基本的に認めているものである。
人格を認め合い、信頼し合えば、友情はなりたつ。結婚生活も同じことで、友情がなりたてば、足りる。両々軽蔑し合えば、もうダメであるが、敵と味方でも尊敬し合うことはできるもので、その限りに於て、政見を異にする故に、夫婦生活が持続できないということはない。
二人の政治意見がおのずから歩み寄ってもよいが、歩み寄らなくともよい。
男女二人のツナガリは常に独自のものであるから、どういう意想外の二人が結びつくのもフシギではなく、その二人が現に在りうれば、そういう関係が有りうることになるだけなのである。
私はしかし御両氏の関係は、かなり前途多難だと考えている。
その第一は、天光光氏は理知性が低い。自分を客観的に眺めるという態度が本質的に欠けている。彼女は純情であり、恋愛に対してはヒタムキであるが、その政治行動が父のウケウリであったように、自分の判断というものが乏しいのである。これも父正一氏のウケウリであろうが、夫婦は政見を同じくしなければならない、ということを疑ぐるべからざる前提としているのである。
これに対して園田氏は、政見を異にしても夫婦関係は成立するということを見きわめている。この点は、はるかに大人の態度である。
しかし問題は、いつでもサリゲなく家出できる筈の三十女を朝の五時ごろ家出させ、墓地へ運んだり、これを新聞記者に追跡させたり、いろいろとカラクリしていることだ。以上の点を考えれば、氏に於ける愛情の熱度はこれによって量りがたいが、氏が結婚を政治的に利用していることは確実だ。これが前途多難を暗示するその二である。
両々これだけのユトリがあれば、まだ救われている。しかるに一方の天光光氏は、因果モノ的にヒタムキで、園田氏のユトリや策略とツリアイがとれていないのである。
この不ツリアイなところに偶然の妙味が生れて二人の均衡がシックリ行けば結構であるが、天光光氏が単にヒタムキな白紙の魂とちがって、夫婦は政見を同じくしなければいけない、などゝ色々と父の狂信的なシメールを背負っている。理知的な内省が乏しく、単に背負ったシメールだけが大きく重いから、これを突きつけられると、たいがい男の方もウンザリしてくるだろうと思う。
おまけに、天光光氏を家出させるに、これだけの芝居を打つ以上、園田氏が政治生命をこの結婚に賭けていることは大であろうから、フタをあけてみて、その政治生命がうまいようにいかないと、血路を他にもとめるのは自然であろう。
天光光氏も理知の低い人で、恋愛に当って、公人だからどうのと云う。こまったガンメイさである。公人もヘッタクレもあるものではない。ミーちゃんもハーちゃんも代議士も恋に変りはないのである。それだけの見解すらも持たないこの人の貧しさが悲しい。
恋にヒタムキであっても、どこかヒタムキのピントが外れているのである。ヤブニラミなのである。代議士というユーレイに憑かれて、足が宙にういているのだ。
ヒタ
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