当人の定量より多い目にのむ必要があるが、翌日はもう定量でよく、三日目、四日目は定量以下へ減らしても利く。多くの人は、このことを御存じない。どうしても定量、又は定量以上のむ必要があると思いこんでいるのである。
私の場合で云うと、私はゼドリンの二ミリの錠剤を七ツぐらいずつのむ習慣だった。一ミリなら十四のわけだが、どうも、二ミリ七ツの方が利くようである。これは製造元でたしかめると分るだろう。二ミリ七ツというのは普通の定量より倍量ちかく多いが、しかし、私は四五年もつづけていて、これで充分だったのである。織田にしても日に最低三十ミりは注射していたし、現在ダンサーの多くは三十ミリの注射ぐらい、朝メシ前という状態である。注射だと、どうしても、そうなりやすい。
私は七ツの定量のところ、第一日目だけ、九ツのむ。二日目は七ツでよく、三日目、四日目は、六ツ、五ツと下げ、四ツですむこともあった。利かなかったら、またのめばよいのだから、はじめは小量でためしてみることがカンジンで、覚醒剤は累進して用いないと利かないという信仰を盲信してはいけないのである。
したがって、私は覚醒剤の害というものを経験したことは
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