も特に風流女学生ではなかったのである。みんなコマ村出身の父兄であり、子弟であった。彼らは実家や親類の家でゴチソウを並べて祭りの日をたのしむらしく、お祭りの境内に一年一度の獅子舞いを見に来ている人は多い数ではなかった。よその村祭りと同じように舞台を造っていたが、夜になると浪花節でもやるのだろう。そして、その時こそは全村老若こぞって参集するのかも知れない。
三匹の獅子は青年がやる。これに対して十歳ぐらいの少年四人が女装して、ササラッ子という役をやる。よそでは天女と云うそうだが、左手に太い一尺余の竹をもつ。竹の上部は削られて空洞になってるが、これを胸に当ててバイオリンのようにもち、右手に割り箸を合せたようなササラをもち、ササラで竹をこすって音をだす。音と云ってもザラザラザラとこすった音しか出ないのは云うまでもない。頭上に四角の箱をのせて四方にベールを垂らし、箱の上には花飾りのような棒を何本も突ッ立てている。
メスの獅子が隠れる時は四人のササラッ子のマン中に隠れる。その周囲をオスの二匹がさがしまわる。
この舞いをササラ獅子舞いと云っているが、舞いは全部で四十四段あり、名称と笛の音が次のよ
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