#「ロ行」は太字]
 ロ
 ロヒ
 ロリ

 となっており、ウ、ト、ヒ、ヤ、リ、ル、ロのほかに稀にコとニが使われているが、これは片手の指で数えるほどしかない。全語数(かりに語とよぶが)の九割以上を占めるのが右の通りで以上主としてたッた七ツの音の組合せで出来ているものである。
 ただ第三十七段に「チトラル」という特別の段があり、ここだけは主として全く別個の音で語をなし、これを整理すると、次の十語の組み合せで出来ている。即ち、
 ラ
 ウラ
 ラル
 ラルラ
 トル
 トルラ
 トルラル
 トラル
 チトラル
 デコデンデン
 この十語のうち、前表中に見出すことのできるのは「トル」の一語あるのみである。
 以上のほかに、前掲の主たる七音と他の音とを組み合せて語をなし、しかも極めて少数しか現れないものに次のようなものがあり、これは若干言葉らしいオモムキをそなえているようだ。
 ジョウジョウネコ
 ホホールト
 ホール
 トッピャッピ
 オカザキ
 デコデンデン(前掲)
 ダンコクサイ(又はダンゴグサイ)
 ゾンゾロシガ
 シルコラタレ・タータ
 チトラル(前掲)
 ドコニイタイタ
 ドコニウ
 以上で全部である。これを組み合せたのが四十四段の楽譜であるが、ジョウジョウネコなどというのはあるいは人名かなア。オオタタネコだのナニワノネコ武振熊《タケフルクマ》だのと云うように。
「ドコニイタイタ」は獅子がササラッ子の中に隠れた段に発せられ、
「どこに行った行った?」ではないかと云われているが、するとそれにつづく、
「ドコニウ、ヒヤヒヤ」
 は、どこにも居ない居ない、というような意味であろうか。
 さて、以上の全ての語を合せても、これをアイウエオに合せてみると、全然使用されない音がたくさん現れる。清音では、
「ア、エ、ケ、ス、セ、ソ、テ、ナ、ヌ、ノ、ハ、フ、ヘ、マ、ミ、ム、メ、モ、ユ、ワ」
 等、二十にも及ぶものが全く使われていない。
 濁音と撥音では、使われている方が例外のように少数で、わずかに、
「ガ、ザ、ジ、ゾ、ダ、デ、ド、ピ」
 の八ツ使われているだけで、他の十七は使われていない。濁音と撥音の使用が少いのが目立つのである。
 結局、アイウエオの各行中に一行全部が使われているのは「ラリルレロ」だけ。これに反して「マミムメモ」と「バビブベボ」は一度も使用せられず、また「パピプ
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