のは、宝塚少女歌劇自身が女兵隊の占領にあき足らないような反逆精神もほの見えるのである。
「ひろい天地」をめざしてバラック映画へ立ち去った諸嬢とても、その本心は占領の女兵隊に対する反逆によるものであろう。当人は持ってまわって考えて、自分では気がつかないが、フロイドという先生は宝塚を見ないうちにチャンとそれを予言して死んだ。つまりそういう自ら気付かぬ反逆を潜在意識といって、これを気がつかずにそのままにしておくと発狂するような悲劇が起ったりする。
 それらスターの最近の流行を思い合せれば、宝塚の他の多くの諸嬢の心中にも女兵隊に対する反逆が充分に育っているとも見られ、まさに公然反逆すべき時期に至っているのかも知れない。そこで男の子の側からも、男にも宝塚を見せろ、とプラカードをかかげる時がきているのだと私は判定したのである。



底本:「坂口安吾全集 11」筑摩書房
   1998(平成10)年12月20日初版第1刷発行
底本の親本:「文藝春秋 第二九巻第一三号」
   1951(昭和26)年10月1日発行
初出:「文藝春秋 第二九巻第一三号」
   1951(昭和26)年10月1日発行
※底
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