いうこともなく、裏切られるということはまずないと思いますよ。
長崎も食べ物は実に安いね。そして、さすがに、日本では最も特徴のある郷土料理をもっていますよ。
そして、結局、本格的な料理で食ったものよりも、私の泊った旅館の料理が一番うまかった。福島旅館というのです。ここで食ったシッポク料理は料理屋のよりもうまかったのです。
あとできいたら、福島旅館なるものは、終戦前まで仰陽亭とか云って、長崎第一級のシッポク料理屋だったそうですよ。うまいわけだ。当時の第一級の板前は居ないにしても、前身がそうであればそう変テコな板前を置く筈はないから当然であろう。宿の定食のあたりまえの料理でもうまい。いわゆる宿屋料理というものではありません。大そう感じのよい静かな旅館でした。
花月という料理屋へ行ったら、こっちの方は十五年前まで女郎屋だったそうですよ。女郎屋といっても特別格の女郎屋で、その建物は築地あたりの第一級の料亭よりも貫禄がありそうだが、この春雨の間で端唄「春雨」が作られたとか、頼山陽の食客の間だとか曰くインネン多々あっても一向に面白くもないものばかりだが、一番面白かったのは、私が酒をのんでいた
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