)をなしているそうだ。
その新火口のテッペンから、バクハツにつれて熔岩がモロモロわきだすのだろうと思うと、さにあらずだそうだね。もっと下の横ッチョに、山の腹をやぶって熔岩をふきだす孔があるのだそうだ。今は二ツある。先日までは三ツ現れた時もあるそうだ。その白い閃光を放つ口から音もなく熔岩がでるのだそうだね。薄気味わるい話さ。なんしろ地底から火の玉を噴いたり、火の川がモロモロと音もなく流れでてくる騒ぎであるから、天地と共に変りあることなし、などゝ子孫に訓辞をたれていられない。測候所の技術者が山へ観測にでかけて、新火山を写真に撮してきた。現像してみると新火山の横ッチョに(まア山のノドクビ、あるいはハナや口ぐらいの高さのところ)孔ができてるのですよ。相当大きな凹みで、火山のヘソのような妙にハッキリしたものだが、撮影した人は肉眼の観測ではそれに気付いていなかったそうだね。
「フィルムのシミかも知れませんね」
測候所の方々は私たちにその写真を示して、こう控えめに仰有《おっしゃ》った。次回の観測の時にはもうそのヘソはなかったし、その後再び現れないから、学者は素性のハッキリしない現象を一応オミット
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