側と波浮《ハブ》側に沙漠が残っているが、これ以上熔岩がたまると、映画屋が沙漠のロケーションに音をあげてしまう。もっとも、鳥取県の海岸に相当の砂丘や砂原があるそうだ。
 この熔岩が風化して再び沙漠になるには百年か二百年もかかるのだろうか。とにかく三原山といえば沙漠が名物であったが、その沙漠が一九五一年に失われて、熔岩原となった。そして今後は熔岩原が三原山の新名物となって、再び沙漠が名物になるには百年もかかるとすると、これは一ツの歴史的な爆発に相違ない。三宅島も地熱が高くなって水がかれ、木がかれはじめたので、噴火が起るのじゃないかと調査団が今朝現地へ到着したと新聞が報じている。
 前回、大島が噴火した安永年間にも、三宅島、八丈、青ガ島が相ついで噴火し、特に青ガ島は再度にわたってサンタンたるものであったらしい。三原山が活動をはじめた、鳴動した、黒煙をふいた、という話は、関東大地震の後だけでも何べんあったか知れないね。黒煙をモクモクとふきだしている写真が何度も新聞に現れて人気をよび、私も見物にでかけたものだ。ところが、今から思えば、あんなのは噴火の卵にも当らんようなものだね。
 新聞の写真が過
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