半と十一時半にでる。午後は定期船がないから、漁師のチッチャな焼玉エンジンで大島へのりこむツモリであった。漁師のポンポン船は二年前からナジミなのである。五十米ぐらいの釣糸をぶら下げて全速力で走りながらたぐりよせると、相当大きな魚がぶらさがって現れてくるね。後に板をひかせて波のりをやったら、檀一雄があんまり勇みすぎて板とともに海中に逆立して網にはさまれ、あわや大事に及ぶところでありました。このポンポン船でも定期船とそう違わぬ速力で大島へ行くことができる。そのかわり、散々海水を浴びなければならない。そのためにレインコートを着て家をとび出そうとしているところへ、大島に於てはバクハツは感じていないそうですと古屋主人の落ちついた電話でした。

          ★

 東京から七時間、一ねむりのうちに。伊東からは二時間、橘丸だと一時間半でカンタンに行くことのできる大島が、風俗習慣がガラリと変っているというのが珍しい。内地を一昼夜特急で走っても、これほど風習の差のあるところはめったに見られない。
 この変った風習のモトについて多少とも解説できればと思ったが、私の調べたところではとても見当がつかない
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