相当つづくらしいから、そのうちに外輪山を破って海へ向って流れはじめるかも知れない。すでに、その時にそなえる用意は完了したそうだ。むかし、スベリ台というのがあったね。外輪山から海へかけては全島ジャングルであるが、間伏の方だけ不毛の砂丘が四百米ぐらい垂れさがっていました。そこへスキー回転競技式の曲線型にレールをしいてオモチャの自動車にお客をのッけてアッというまにすべり降りる仕掛けがあった。私もそれを用いて降りたことがあったが、あんまり、よその大人はそのような降り方に愛着がないらしく、スベリ台で間伏の方へ降りようというヒマ人の姿を見かけなかったものさ。物好きのアベックでもやらんという実に色気のないものだったね。いまや往昔私のようなバカモノを滑り降した代りに、この不毛の砂丘へ熔岩を落下させようという計略だそうだ。熔岩はまんまと計略にかかって定めの通路を落ちるだろうという予定だね。十年前の私のように。
 いま御神火茶屋から火口へ行くには、熔岩原を横断するわけにいかないから、外輪山と押しよせた熔岩の間に幅十米ぐらいのスキ間が残って谷をなしてるところを迂回して行くのであるが、大廻りだし砂の道だし、急
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