ね。仙台は山と平野の接点だ。眼下に平野を見下して、青葉山は天嶮だが、天嶮すぎらア。前面には広瀬川が城の三方をまわって流れ、後は渓谷をへだてて嶮しい山つづきである。青葉山そのものは河床からまッすぐそびえたつ岩山で、石垣でくみたてる必要がない。テッペンまで登るのに私は大苦労させられましたよ。私の案内者は山登りの愛好者だが、彼らも息を切らしていたほどだから、私はムシブロの中にいるように流汗リンリ、フラフラである。築城まもなく大坂の陣も終って天下に平和到来し、政宗も本丸の所在地が高い山のテッペンすぎるのを新発見してウンザリしたらしいね。築城の第一候補地は石巻の日和山であったなどと云いだしたのは、それから後のことだろう。時世に合せて、気がつきもしたし、前から気がついていたように、言いふらしたくもなったような気がするね。いつも後手後手と気がついた男で、それで生涯冷汗をかいていたのが政宗さ。オレ一代限りでテッペンの本丸をやめて、フモトの低いところへうつせ、と云いのこして死んだそうだ。そこで二代目から本当にフモトへ本丸をうつしたよ。拙者だけが登り道に苦労したわけではなかったのさ。すでに城を造った当人が
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