知らねばならぬ。当り前じゃないか。
とにかく仙台が強風季節の火事にこりて、大通りを新設したのは利巧なことさ。この町の気風にしては出来すぎたことだね。なんしろ政宗以来の水害地帯がいまだに年々変りなく水害の起るがままという県だからね。
しかし、物と人の単なる集散地には独創だの計画だのというものは、あんまり現れることがないのだろう。この都市の業態生態がそれを必要としないのだもの。人の目の色を忖度《そんたく》して稼ぐような変な鋭さだけ発達し、その変な鋭さをこの町では利巧と云うような悲しい趣きがありはしないかね。田舎豪傑の政宗も根はそれだけの人であったのさ。そして変な鋭さがいつもヤブニラミで的を外れていたのさ。
★
この県には三陸の漁場をひかえて、塩竈、石巻という二ツの市、気仙沼《ケセンヌマ》、女川《オナガワ》、渡波《ワタノハ》などという漁港がある。ほかに、金華山にちかく、牡鹿半島の尖端に鮎川という鯨専門の漁港がある。
石巻は北上川の河口が港だから、せいぜい五百トンぐらい。大きな船ははいれない。塩竈は天然の良港で、前面には一群の松島が天然の防波堤の役を果しているし
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