遊興の席が賑うのは当然で、遊女屋をしめだしたのは今の話ではないのである。生産するのも、学問するのも、自分ではない。自分はブローカーであり、素人下宿である。そういうような表情がありますね。なんしろ、これだけの都会で、東北の中心で、三百年も大藩の城下でありながら、市当局でヘンサンした市史というものを持たないのだ。パンフレットのような薄ッペラなものがあるだけさ。お膝元に東北大学という官立の総合大学があって、市史のヘンサンがないのだから、気風の一斑を知るべきだ。つまり学問は自分がやるものではなくて、自分は素人下宿をやろうというわけさ。市史? そんなものが、いるもんか。政宗公は日本一の人物だ。瑞巌寺は日本一の桃山建築だ。松島は昔からの日本三景の親玉だ。それでタクサンでゴザリスデゴザリスでござりすよ。
戦火でやける前の仙台の街は知らないが、戦後の仙台は新しい大通りを新設し、現在は工事中で汚いけれども、相当な明るい街に復興しつつある。仙台には火事が多く、強風の吹く季節の風の方向も一定していて、防火のための大通りだということだ。
私は東京都が、戦災直後、終戦直後になぜ年来の都市計画を実施しなかった
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