ましょうと、小切手だかに、チョイ/\/\とフンム器みたいなもので消毒したんだそうですね。
ツラツラ失敗のあとを尋ぬるに敵を信用せしめるレッキとしたマーク入りの腕章がなかった。又、附近にホンモノの病人がいて、その病人の住所姓名を心得ていないとダメなんだ。これを先生、さとったんですね。そこで、ついに椎名町《しいなまち》で、成功致された。成功致されたけれど、まったく、偶然の成功ですよ。
つまり、荏原と中井の失敗によって、たまたま発見した術を用いて不思議に成功しただけのことで、この時は、こう、あの時は、こうと、他のあらゆる危険を考慮して成功致されたわけではないのであります。
一人のまない人間がいても、すぐ失敗する。
たまたま一人便所にいても失敗する。外から誰かが這入ってきても失敗する。オレは、もう、昨日チブスの注射をしたんだい、という給仕が現れてもダメなのであります。
すると帝銀先生は、又、三十分椎名町支店長とムダ話をして、新知識を会得して、むなしく引きあげたかも知れません。そして、その新知識の対策を用意して、たとえば、誰か、便所にいる奴はないか、と注意する術を新たに会得して、四軒目
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