わって軽蔑しますよ。テコヘンな店ができたよ、とか、脳タリンスの店だよ、なんてね。ところがです。とかく御婦人というものは、テコヘンなところや、オッチョコチョイの脳タリンスをひやかしてみたくなるものなんです。見ていてごらんなさい、脳タリンスのシルコの味を見てみましょうてんで、千客万来疑いなしですから。これ即ち、深謀遠慮というものです」
「こんな文章しか書けないくせに、虚勢をはるんじゃないよ」
「エッヘッヘ。裸ショウバイの御方にはわかりませんです。ワタシはちょッと心理学を用いましたんです」
 開店すると、狙い違わず、ミーちゃんハーちゃん千客万来である。
 お客は御婦人と狙いをつけてのことであるから、給仕には女をださず、女房も店の奥へひっこめて、男の大学生を三人、給仕人に雇った。
 三人の数にも曰くがあって、町内の六人組に三人たすと九人になって、野球のチームができる。
 そこで町内の小公園の野球場で試合をすることになり、両軍勢揃いして、見物人も集り、試合がはじまる頃になると、シンちゃんがフロシキの包みから何やらとりだした。これを大学生が球場の松の木へ登って、誰の手にもとゞかない高いところへぶら
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