いついてイタズラをしたのであるが、今さら白状もできないから、別のノレンを新たにこしらえて、おまけに、どっちの代金も払ってくれない。自業自得というもので、悪事の結果はやっぱり良からぬものである。
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質屋の商売は世評のよからぬものである。そのくせヤミ屋やモグリの商売を誰も悪く言わないのだから、そうまで卑屈に親代々の商売にかじりついてる法はない。
さいわい町内にソバ屋の店が売物にでたから、これを買って、シルコ屋をはじめることになる。友達は有難いもので、古道具屋にオシルコの椀があったからと持ってきてくれたり、千鳥波などは、こういう時には役に立つ。餅臼をハンドバッグみたいにチョイとぶらさげてきてくれる。
「このオソバ屋の店は大きすぎら。お客というものは小さなところへゴチャ/\つめられると、あそこはハヤルとか、ウマイとか、とっかえひっかえ来るものだ。広々としたところへポツンと置かれちゃア、二度と来やしないよ。店を小さくしなさい」
「できてる店を小さくしろたって、ムリですよ。もぎとるワケにいくものじゃないです」
「バカだよ、お前は。大きい、小さいも、ひとつは感じの問題だ
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