あるからね。政治が入ってくると身近なものがなくなるんだ……
 今ボクは「復員殺人事件」と云うのを書いてるが、あれは気狂病院にいるとき考えた。登場人物は、前に書いた「不連続殺人事件」よりもすくなく、今迄以上は出てこない。型は両方似ているがね。今度も前と同じように、最後の一回前で中止して答案を募集するつもりだ。この前の「不連続殺人事件」では答案がたくさん来てね、読むのにウンザリしたが、ぼくひとりで全部読んだ。――この間大井広介から手紙が来てね、相変らずムチャ書いてるよ。彼は自分の推理があたれば、それは良い小説で、あたらないのは小説がわるいんだときめている。自分があたらなければ、それは探偵小説じゃない、と云うんだ。大井広介の論理とはそんなものだよ。[#地付き](文責在記者)



底本:「坂口安吾全集 08」筑摩書房
   1998(平成10)年9月20日初版第1刷発行
底本の親本:「近代文学 第四巻第一一号」
   1949(昭和24)年11月1日発行
初出:「近代文学 第四巻第一一号」
   1949(昭和24)年11月1日発行
入力:tatsuki
校正:noriko saito
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