ンケチに包んだ私の入れ歯を持ってきた。
衣子の憎しみと嘲弄がそこにこもっているのである。私はヤス子に羞しかった。
「ねえ、ヤス子さん、人の怒りというものは、すさまじいものですよ。私は怒りましたよ。そして、喚きましたよ。然し、ですよ。喚いたと云ったって、歌唄いほどデッカク声をはりあげるわけじゃなし、ちょッとばかり声高になったというだけで、別に飛び上りもしなけりゃ、腕をふりまわしもしないのです。それでいて、どうですか。喚くうちに、私は入れ歯を吹きとばしたのです。喚き声のでるのと一しょに、とびだして、なくなったのですよ。嘘のようだが、本当なのですから、不思議ではありませんか。人の怒りというものは、つまり、気魄というようなものに、何か電気の動力みたいな運動力があるんじゃないかな」
ヤス子の顔に、あたゝかい笑いがこもった。こんなことは、この時までは殆んど、なかったことであった。そして、しばらく、何かをあたゝかく抱いているような様子であったが、
「この入れ歯、病院の奥様が私にお渡しの時は、汚い雑巾につつんでありましたのです。その雑巾で拾いあげたまゝを、お渡しになったのですわ」
なるほど、たゞ
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