、姫君、よくこそ、いらせられた。意外な光臨じゃないか」
自宅にいると、こんな時には即座にジロリ、つゞいてプイと座を立つところだが、さすがに小娘のことで、やゝ俯向いて、クスリと笑っている。
このチンピラがなぜ又ヤス子を訪れたかと云えば、これが又、意外きわまるものであった。
美代子が附属の女学校へあがったころ、ヤス子は大学英文科評判の才媛で、全校の女王のような存在であった。美代子はチンピラ組の女王であったが、かねて大女王にあこがれたあげく、自分も成人して大学英文科にはいり、あのような御方になりたいと思いつのって、ラヴレターのようなものを差上げて、ヤス子にコンコンと諭されて嬉し涙を流すという古いツキアイの由であった。あげくに初志を貫徹して、目下大学英文科御在学であり、小娘の一念、あなどるべからずである。
戦禍のドサクサ以来音信も絶えていたが、このたび我が身にあまる悩みの種が起って、姉君に相談したいと手をつくして、住所をつきとめ、かくてわが社へ御来臨と相成った次第の由、悩みの種とは、申すまでもなく、例の縁談のことであった。
さて姉の君を訪れてみれば、こは又意外、かのエゲツなきヤミ屋の
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