くれても、いかんぞ」
 一同を睨みまわして、
「オレは本日、これより、国際親善のパーテーに行く。国際親善は、オレのモットーだ。これだぞ。これでなくちゃ、いかんぞ、日本は、外務省などに、まかして、おけん。オレは民間外務大臣みたいなものだぞ。国際親善の実をあげておる。いゝか。これを見よ。オレはだなア、酒をのみつゝも、国際親善、この大きな目的を果しつゝ飲んでいるぞ。しかるに、なんだ、貴様らは。貴様らには、文化という重大な任務が課せられておる。その責任を果すのは、本懐じゃないか。国際親善、及び、文化。実に、これは、重大であるぞ。不肖、車善八、もうけたる大金を快く投げだして、文化国家建設に一身を挺す。これだけの人物は、日本に、おらんぞ。主義のため、国家のために、一身をギセイにしておるぞ。いゝか。わかったか。貴様らのイノチは、オレが、もらったぞ」
「だってさ、そりゃ、いけねえなア。困っちゃったな。オレは、イノチは、やられねえなア。なア、オイ、だって、ひとつしか、ねえもの、困るよ、なア」
 と、大きな声で、悲鳴をあげたのは、土井片彦という自称天才詩人、二十六歳である。時と場所を心得ない。花田一郎は、
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