、人員を整理し、機構を改良せずに、我々の生活水準を向上せしめる魔法的方法があると思っているのだろうか。ただ単に搾取階級がなくなったぐらいで、この狭小にして資源の乏しい国土から、多くのものは決してもたらされはしないのだ。
 日本の共産党はクビキリ反対を唱えるばかりで、積極的な建設案を持っていない。農業問題にしても、狭小な国土から収穫を増加するための肥料の研究とか、寒冷地や積雪に対する農産物の科学的対策研究とか、そういう進歩的な具体的な建設作業に資金をつぎこんでいるということも聴いたことがない。
 共産党の本家本元のロシヤがそうで、あれだけ広大な国土を持ちながら、広大な寒冷地帯をほッたらかして、やたらと温暖地へ侵略南下作業を行っているばかりである。原子バクダンの研究製造などに何百億つぎこむよりも、科学陣を総動員して、寒冷地帯を農耕化する研究に没頭した方が、はるかに進歩的であり、平和的であると思われるが、こういう一番大切なことが、共産主義国家に於ては、常に二の次、三の次、殆ど問題ともされておらぬのである。どこに進歩性があるのであるか。
 もし歴史というものを読むならば、焼け野となった敗戦国日
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