高の学識を有した高僧であったのであります。とは申しますものの、このジェスイット派と申しますのは、十六世紀の初頭にいたってカトリックが腐敗いたしまして、それに対抗しそれを改革しようとして、例のマルティン・ルーターが新教(プロテスタント)を樹立した、その結果としてカトリックの名声が地に墜ちました時に、こんなことでは不可《いけ》ないというので、真のカトリック精神、根本的なものへ還った意味でのカトリックの精神を実質的に回復させなければならぬというので、イエス・キリストの弟子という標語を押し立てて組織されたところの、非常に強力な同志的な結合をもっている宗教団体でありまして、貧乏、童貞、服従という三つの徳目をモットーといたしまして、人間個人の一切の私利とか私慾とかいうものを捨離して、神に仕えるという宗教であります。この宗派のこのモットーは大変に厳しいのでありまして、戒律というようなものが厳しいものであるなかでも、このジェスイット派は、特に厳格な戒律を守るという誓言によって成立した宗派なのでありました。この宗派が確固としたものとなりましたのは、フランシスコ・ザヴィエルがニッポンに到着しました時の九年
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