坊を一緒に連れて参りましたので、その黒ん坊を大変珍らしがってニッポン人が押しかけました。
サツマの殿様の島津さんに謁見いたしまして、布教の許可を受けることができました。この時にザヴィエルが、鹿児島のフクソウ寺のニンジという高僧と友だちになりました。このフクソウ寺というのは、鹿児島の島津家の菩提寺だそうで、当時百人ほどの禅僧がおったと申しますから、非常に大きなお寺、サツマで最大のお寺であり、そこのニンジという禅僧は、サツマきっての傑僧であったのだと思います。
ザヴィエルは、このお寺を借りまして、キリスト教の説教を始めました。
フランシスコ・ザヴィエルは、フクソウ寺の傑僧ニンジと、毎日のように顔を合せていますし、いろいろなことで友達になったのでありますが、ニンジとは種々の話題をつかまえて話をしておりまして、それが記録みたいなものに残っております。
ザヴィエルが或る日、フクソウ寺へやって行きますと、百人ばかりの坊主が坐禅をやっておるところでした。これは変った風景に見えたことでありましょう。
ザヴィエルは、
「あれは、一体、何を為ているのですか?」
と聞いたのであります。
ニンジ
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