たえ、狭小な国土に利用地をふやすことにもなる。それぐらいのケイカクは当然立案されて然るべく思われるのに、そんな声もきかれない。
 身のまわり、私生活は、できるだけ簡便にすべきもので、せまい国土のくせに一人一軒の木造家屋に住んでいるなどとは、愚の骨頂である。
 新生活運動とでも申すべきが起るならば、日本の大半が焼け跡となり、これから建設、という今が何より適当で、これを利用して、文化国家建設のイトグチとすべきであろう。
 禍いは、これを利用せよ。そして、進歩せよ。天災という言葉はマッ殺するようにならなければならぬ。
 地震にこりることを知らない魂は、戦争にもこりることを知らないのである。

     総意的な流行

 東郷、乃木将軍らの軍国切手が追放されたに代って、文化人の肖像を入れた「文化」切手をつくろうと逓信省が案をねっているそうだ。
 このキッカケとなったのは、七月卅日の幸田露伴の一周忌を記念して、この文豪の肖像を切手にしては、と日本出版協会から申入れがあったせいの由である。
 以上は新聞の雑報であるから、真偽のほどは確かでないが、日本出版協会とか何とか文化団体とかのやりかねないこと
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