つかって小説の書ける身分じゃないから、絶対に自分の書斎が必要である。なるほど、そうだ」
彼の感動に誇張はなかったのである。
「その部落へボクも一枚入れてくれないかね。六七十坪でタクサンだよ。二間あれば、いゝんだ」
檀一雄の家も二間。真鍋呉夫の家も二間。私の家の設計も二間。尾崎士郎も二間ときては、この部落には二間以上の家はない。その代り、私の家にはテニスコートをつくり、檀一雄は二十五|米《メートル》のプールをつくる。プールの横へ二間の家を造って、檀君がそッちへ移ると、今まで檀君のいたところへ真鍋君が移り、真鍋君の家のあとへは長畑さんが越してくることになっていた。私たちにとって必要なのは、信頼のできる医者なのである。すくなくとも、私には、もはや食事の如くに必要であった。
しかし、いったい、健康とは、どういうことを云うのだろう。私が東大の神経科で見た分裂病の患者の半数ぐらいは、むしろ筋骨隆々たる人たちであった。私自身も、十八貫の肉体なのである。私はアドルム中毒で入院したが、鬱病という診断でもあった。しかし鬱病であるか、どうか、私は疑問に思っている。
私は二十一の時、神経衰弱になったこ
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