物語のなぜか遥かな悲しさに、しばらく感慨を禁じ得ませんでした。
この本の跋に、次のやうな漢文がしるしてあるのです、
花非花霧非霧。夜半来[#(テ)]天明去[#(ル)]。来如春夢幾時。去似朝雲無覓処。
さあ。僕のお喋りはすみました。あんまり子供つぽいことばかり書いて、君は分つて下さるでせうが、ほかの読者に些かてれくさくなりましたので、景気直しに、次の歌はいかがですか。ナポレオンの晩年、突然フランスの民衆が歌ひだした流行歌であります。
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その昔イヴトオの王様は
青史にのこる名も成さず
手柄をたてん心もなくて
送るや半生|寝家《ねや》の中
日暮るれば又いつもいつも
綿の頭巾を冠にて
心も安き高いびき
やんら目出度やな目出度やな
さつてもさても慕はしの君
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底本:「坂口安吾全集 03」筑摩書房
1999(平成11)年3月20日初版第1刷発行
底本の親本:「文体 第二巻第一号」スタイル社
1939(昭和14)年1月1日発行
初出:「文体 第二巻第一号」スタイル社
1939(昭和14)年1月1日号発行
※底本は、物を数え
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