かげろふ談義
――菱山修三へ――
坂口安吾

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)始《そ》めける

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)半生|寝家《ねや》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]

 [#(…)]:訓点送り仮名
 (例)夜半来[#(テ)]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)やるまいぞ/\
−−

 二ヶ月ばかりお目にかかりませんが、御元気のことは、時々人づてにきいてゐました。さて、僕は今日、人々は笑ふばかりで、とりあつてくれさうもないことに就いてお喋りしたくなりましたので、君にあてて話しかける必要にせまられました。
 東路の道のはてよりも、なほ奥つかたに生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを、いかに思ひ始《そ》めけることにか、世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばやと思ひつつ、徒然なるひるま、よひゐなどに、姉継母などやうの人々の、その物語、かの物語、光源氏のあるやうなど、ところどころ語るを聞くに、いとどゆかしさまされど、わが思ふま
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