ひそめ、耳を澄ましてゐた。女達のめざましい肉慾の陰で。低俗な魂の陰で。エゴイズムの陰で。私がいつたい私自身がその外の何物なのであらうか。いづこへ? いづこへ? 私はすべてが分らなかつた。

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(附記 私はすでに「二十一」といふ小説を書いた。「三十」「二十八」「二十五」といふ小説も予定してゐる。そしてそれらがまとめられて一冊の本になるとき、この小説の標題は「二十九」となる筈である)
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底本:「坂口安吾全集 04」筑摩書房
   1998(平成10)年5月22日初版第1刷発行
底本の親本:「新小説 第一巻第七号」
   1946(昭和21)年10月1日発行
初出:「新小説 第一巻第七号」
   1946(昭和21)年10月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※新仮名によると思われるルビの拗音、促音は、小書きしました。
入力:tatsuki
校正:深津辰男・美智子
2009年7月8日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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