るから、却々《なかなか》犯人がつかまらないのは当然で、これは刑事の頭が悪いのでもなく、近代捜査法を知らないのでもなく、偶然だから、つかまらないのだ。動機もハッキリしなければ、登場人物も、日本人全部の中から探さゞるを得ないのだから、益々つかまらない。刺青殺人事件のようなトリックなら、日本の刑事はすぐ見破るにきまっている。
然し、この作者は、すぐ見破られるトリックをつかっているから、そこが良いところだとも云える。つまりケレンがないのだ。論理性はあるのだ。やたらと不可能不可解の奇術を弄していない。たゞ、トリックの組み立て方が幼稚だったのである。
たとえば、見ず知らずの人に包みを渡すというあの不自然さが、そもそも、このトリックを幼稚にしており、ハハア、これはクサイ、こゝにトリックの鍵があるな、とすぐ思わせる。
姉と妹の刺青の腕の部分が違うということを、もっと、自然な、さりげない方法で読者に示す工夫が、この小説のヤマなのである。この作者はそこに工夫が足りなかった。そこのところを巧みに提出することに成功すれば、このトリックも、かなり成功するのである。
その写真を被害者の兄に見せると、ビック
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