。な建物である。
とがった急な屋根、奇妙な小塔、大きな白い時計面、小さな円柱の並んでる各階、無数のガラス窓、人の足ですりへってる階段、左右二つの迫持《せりもち》、そういうものをつけてそこに、グレーヴの広場と同平面に控えている。陰鬱で、悲しげで、全面老い朽ちて、ひどく黒ずんで、日があたってる時でさえ黒く見える。
死刑執行の日には、そのあらゆる戸口から憲兵が吐き出され、そのあらゆる窓から人の目が受刑人を眺める。
そして晩には、刑執行の時間を報じたその時計面が、建物の暗い正面に光っている。
三八
一時十五分だ。
私はいま次のような感じを覚える。
激しい頭痛。寒い腰と、燃えるような額。立ちあがったりかがみこんだりするたびに、脳のなかに液体でもはいってるような気がし、そのために脳みそが頭蓋骨の内側にぶつかるような気がする。
痙攣《けいれん》的な身震いがする。そしてときどき、電気にでも打たれるようにペンが手から落ちる。
煙のなかにでもいるように目がひりひり痛む。
肱の具合が悪い。
もう二時間と四十分、そうすれば私はすべて回復するだろう。
三九
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