゙を、眼前に描きだしてみるがいい。寓意や提喩の泥のなかに二、三の有毒な文体を煮こんで、それから一人の男の死を一生懸命にしぼりだし煎じだそうとしている彼に、目を止めてみるがいい。彼がその論告を書いている一方には、そのテーブルの下に、影のなかに、彼の足もとに、たぶん死刑執行人がうずくまっていることだろう。そして彼はときどきペンを休めて、主人が自分の犬に言うように、死刑執行人に言うだろう、
「静かに、静かにしておれ、いまに骨をしゃぶらしてやるよ。」
 しかるに、私的生活ではこの法官も、ペール・ラシェーズのあらゆる墓碑の銘にあるように、正直な男で、よい父で、よい子で、よい夫で、よい友であることができる。
 法律がそれらの悲しむべき職務を廃する日の近からんことを、希望しようではないか。われわれの文明の空気だけでも、時がたてば死刑を磨滅してしまうはずである
 死刑の弁護者らは死刑がどんなものであるかをよく考えてみなかったのではないか、と思われることがよくある。社会が自分で与えもしなかったものを取り去ることについて僭有《せんゆう》しているその無法な権利を、取り返しのつかない刑罰のうちでももっとも取り
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