ト言えば、衣をはがれ、裸体にされ、検事局の堂々たる世迷《よま》い言《ごと》をはぎ取られ、むごたらしく白日の明るみにさらされ、正当の視点にすえられ、本来あるべき場所に、実際ある場所に、本当の環境に、恐るべき環境におかれ、法廷にではなくて死刑台に、判事の手中にではなくて死刑執行人の手中におかれた、生と死との問題である。
著者が取り扱おうと欲したものは右のとおりである。あえて望みかねることではあるが、それをなした光栄をもしも将来いつか著者が得ることがあるとすれば、著者にとって本懐の至りである。
そこでなお言明しくりかえすが、著者は無罪のあるいは有罪のあらゆる被告の名において、すべての法廷や裁判所や陪審や審判の面前に席を占め、本書はすべて裁判官たる者に掲示されるものである。そしてこの弁論は、事件が広範にわたると同様に広範にわたるべきものであるから、したがって、『死刑囚最後の日』はそういうふうに書かれたのであるが、主題において各方面に削除をほどこし、偶発的なこと、事件的なこと、個人的なこと、特殊なこと、相対的なこと、変更できること、枝葉のこと、珍しいこと、結末のこと、人物の名前などはすべて除
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