ハれた敷石の上に泥のなかに座らせられた。首輪がためしてみられた。それから監獄の二人の鍛冶屋が、携帯用のかなとこを持ってきて、冷酷にもその首輪をかなづちで彼らに鋲締めした。もっとも豪胆な者でさえあおくなる恐ろしい瞬間だ。背にあてられてるかなとこに打ちおろされるかなづちの一撃一撃は、受刑人のあごをはね返させる。前から後ろへちょっとでも動こうものなら、頭蓋骨はくるみの殻のように打ち砕かれるだろう。
その処置がすむと、彼らは陰鬱になってしまった。聞こえるのはもう鎖の震える音だけで、また間をおいて、強情な者の手足に監視が加える棒の純い音と、ある叫び声とだけだった。泣きだす者もあった。老人らは唇をかみしめて震えていた。鉄の枠のなかのそれらの凄惨《せいさん》な横顔を、私は恐怖の念で眺めた。
かくて、医者の検査の後、獄吏の検査があり、獄吏の検査の後、鉄枷がつけられる。三幕の観物《みもの》である。
日の光がまたさしてきた。そのために徒刑囚らの頭のなかには火が燃えだしたかのようだった。彼らは痙攣《けいれん》的な動作で一度に立ちあがった。五すじの綱は手で繋ぎ合わされて、突然ランプの柱のまわりに大きな円を作った。そして彼らはめまぐるしいほどにまわった。まわりながら徒刑場の唄を、隠語の情歌を、あるいは激しい快活な、あるいは悲しい節で歌った。間をおいては、金切声の叫びが、息をはずませたきれぎれの笑いが、ふしぎな唄の言葉にまじって聞こえた。それから猛り狂う歓呼の声がおこった。拍子をとってぶつかりあう鎖の音が、それより鈍い唄声に管弦楽の用をしていた。魔法使いの宴を想像するとすれば、ちょうどそれにふさわしいものだったろう。
中庭に大きなバケツが持ってこられた。監視らは徒刑囚らを棒でなぐってその踊りをやめさせ、バケツのところへつれていった。バケツには湯気のたってる汚いなんとも知れぬ液体のなかになんとも知れぬ草みたいなものの浮いているのが見えていた。徒刑囚らは食事をした。
食べてしまうと彼らは、残りのスープと黒いパンとを地面に投げすてて、また踊りと唄とをはじめた。鉄枷をつける日とその晩とは、それだけの自由が彼らに与えられているものと見える。
私はその異様な光景を、ごく貪欲な痛烈な注意深い好奇心で見守っていたので、自分自身を忘れはてていた。強い憐れみの念に胸の底までかきむしられ、彼らの笑いに涙
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