驍サの広場に集まる、ということもあるかもしれない。青ざめた血まみれの群集で、私もそのなかにはいってるだろう。月の光はなく、みなは低い声で話す。市庁がそこに腐食した正面と、きれぎれの屋根と、みなに無慈悲だった時計面とを見せている。広場には地獄の断頭台があって、一人の悪魔が一人の死刑執行人を処刑している。午前の四時のことだ。こんどはわれわれが周囲の群集となるのである。
 おそらくそうなんだろう。しかしそれらの死人がまた出てくるとしたら、どういう形で出てくるだろうか。断ち切られた不完全な体のどこを保存してるだろうか。どこを選んでるだろうか。幽霊になるのは、頭だろうか胴体だろうか。
 悲しいかな、死はいったいわれわれの魂をどうするのか。いかなる実体を魂に残すのか。魂から何を奪い、あるいは魂に何を与えるのか。魂をどこに置くのか。この地上で眺めるためにそして泣くために、肉眼を魂にかしてやることがあるのか。
 ああ、司祭、そういうことを知ってる司祭、それを一人私はほしい、そして接吻すべき一つの十字架像を!
 ああしかし、やはり同じことだ!

       四二

 私は眠らせてもらいたいとたのんで、寝床の上に身を投げだした。
 実際私は頭に鬱血していて、そのために眠った。それは私の最後の眠り、この種の最後の眠りだった。
 私は夢を見た。
 夢のなかでは、夜だった。私は自分の書斎に二、三の友人と座っていたようだ。どの友人かは覚えていない。
 妻は隣りの寝室に寝て、子供とともに眠っていた。
 私たち、友人たちと私とは、低い声で話をしていた。そして自分の言ってることに自分で恐がっていた。
 突然、どこか他の室に、一つの音が聞こえるようだった。何だかはっきりしない弱い異様な音だった。
 友人らも私と同じくそれを聞いた。私たちは耳を澄ました。ひそかに錠前を開けてるような、こっそり閂を切ってるような音だった。
 何だかぞっとするようなものがあって、私たちは恐かった。この夜ふけに盗人どもが私の家へはいりこんできたのだろう、と私たちは思った。
 見に行ってみようと私たちは決心した。私は立ちあがって蝋燭を取った。友人らは順次についてきた。
 私たちは隣りの寝室を通った。妻は子供と眠っていた。
 それから私たちは客間に出た。何の変りもなかった。肖像はどれも赤い壁布の上に金枠のなかにじっとしていた。た
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