あった。場所の要害はその努力にふさわしいものであり、防寨《ぼうさい》はバスティーユの牢獄の消えうせた場所に出現して恥ずかしくないものであった。もし大洋が堤防を築くとするならば、おそらくかかる防寨《ぼうさい》を築くであろう。狂猛な怒濤《どとう》の跡はその畸形《きけい》な堆積の上に印せられていた。しかもその怒濤は、下層の群集だったのである。その喧囂《けんごう》の状の化石が見えるかと思われた。急激な進歩の暗い大きな蜂《はち》の群れがおのれの巣の中で騒いでるのが、この防寨の上に聞こえるかと思われた。それは一つの藪《やぶ》であったか、酒神の祭であったか、それとも一つの要塞《ようさい》であったろうか。眩惑《げんわく》の羽ばたきによって作られたものかと思われた。その角面堡《かくめんほう》のうちには一種の塵芥《ごみ》の山があり、その堆積のうちには一種のオリンポスの殿堂があった。その絶望に満ちた混乱のうちに見らるるものは、屋根の椽木《たるき》、色紙のはられた屋根部屋の断片、砲弾を待ち受けて物の破片のうちに立てられてるガラスのついた窓の扉《とびら》、引きぬかれた煙筒《えんとつ》、戸棚《とだな》、テーブル、
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