大なる弱点がある。砲弾は一時間に六百里しか走れないが、光線は一秒に七万里走る。それがすなわち、イエス・キリストのナポレオンに勝《まさ》るところだ。」
「弾をこめ!」とアンジョーラは言った。
防寨の面は砲弾の下にどうなるであろうか。砲弾に穴をあけられるであろうか。それが問題であった。暴徒らが銃に再び弾をこめてる間に、砲兵らは大砲に弾をこめていた。
角面堡《かくめんほう》内の懸念はすこぶる大きかった。
大砲は発射された。轟然《ごうぜん》たる響きが起こった。
「ただ今!」と快活な声がした。
砲弾が防寨《ぼうさい》の上に落ちかかると同時に、ガヴローシュが防寨の中に飛び込んできた。
彼はシーニ街の方からやってきて、プティート・トリュアンドリー小路に向いてる補助の防寨を敏捷《びんしょう》に乗り越えてきたのだった。
砲弾よりもガヴローシュの方が防寨《ぼうさい》の中に騒ぎを起こした。
砲弾は雑多な破片の堆《うずたか》い中に没してしまった。せいぜい乗り合い馬車の車輪を一つこわしアンソーの古荷車を砕いたに過ぎなかった。それを見て人々は笑い出した。
「もっと打て。」とボシュエは砲兵らに叫んだ。
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