て下すった。僕を背中にかついで、あの恐ろしい下水道を通られた。ああ僕は実に恐ろしい恩知らずだ。コゼット、あの人はお前の守り神だった後、僕の守り神になられた。まあ考えてもごらん、恐ろしい泥濘孔《どろあな》があったのだ、必ずおぼれてしまうような所が、泥の中におぼれてしまうような所が、コゼット、それをあの人は僕をつれて渡られた。僕は気を失っていた。何にも見えず、何にも聞こえず、自分がどんなことになってるか知ることができなかったのだ。僕たちはあの人を連れ戻し、否でも応でも家に引き取り、もう決して離すことではない。ああ家にいて下さればいいが、すぐ会えればいいが! 僕はこれから一生あの人を敬い通そう。そうだ、そうしなければいけない、そうだろう、コゼット。ガヴローシュが僕の手紙を渡したのは、あの人へだったに違いない。それですっかりわかる。お前にもわかったろう。」
 コゼットには一言《ひとこと》もわからなかった。
「おっしゃる通りですわ。」と彼女は言った。
 馬車はそのうちにも駛《はせ》っていた。

     五 背後に昼を有する夜

 扉《とびら》をたたく音を聞いてジャン・ヴァルジャンは振り向いた。
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