しかもやさしい徳であり、広大なるためにかえって謙譲なる徳であった。徒刑囚の姿はキリストの姿と変わった。マリユスはその異変に眩惑《げんわく》した。彼は自分の今ながめているものがただ偉大であるというほか、何にもはっきりとわからなかった。
 間もなく一台の辻馬車が門前にやってきた。
 マリユスはそれにコゼットを乗せ、次に自分も飛び乗った。
「御者、」と彼は言った、「オンム・アルメ街七番地だ。」
 馬車は出かけた。
「まあうれしいこと!」とコゼットは言った、「オンム・アルメ街なのね。私は今まで言い出しかねていましたのよ。私たちはジャンさんに会いに行くんですわね。」
「お前のお父《とう》さんだ、コゼット、今こそお前のお父さんだ。コゼット、僕にはもうすっかりのみ込めた。お前はガヴローシュに持たしてやった僕の手紙を受け取らなかったと言ったね。きっとあの人の手に落ちたに違いない。それで僕を救いに防寨《ぼうさい》へきて下すったのだ。そして、天使となるのがあの人の務めでもあるように、ついでに他の人たちをも救われたのだ。ジャヴェルをも救われた。僕をお前に与えるために、あの深淵《しんえん》の中から僕を引き出し
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