る。どこへなりと行くがいい、姿を消してしまうがいい。ただ楽に暮らすようにと、それだけ僕は希望しておく。さあ、ここにまだ三千フランある。それを持ってゆけ。明日《あした》からでもアメリカへ行くがいい、娘といっしょに。君の妻はもう死んでいる、けしからん嘘《うそ》つきめが! 出発の時には僕が見届けてやる、そしてその時二万フランは恵んでやる。どこへなりと行ってくたばってしまえ!」
「男爵閣下、」とテナルディエは足下まで頭を下げながら答えた、「御恩は長く忘れません。」
そしてテナルディエは何にもわけがわからず、黄金の袋で打ちのめされ、頭の上に紙幣をまき散らす雷電に打たれ、ただあっけに取られたまま狂喜して、そこを出て行った。
彼はまったく雷に打たれたと同じだったが、しかしまた満足でもあった。もしその雷に対して避雷針を持っていたならば、かえって不満な結果となってたであろう。
ここにすぐ、この男のことを片づけておこう。今述べてる事件から二日の後、彼はマリユスの世話によって、名前を変え、娘のアゼルマを連れ、ニューヨークで受け取れる二万フランの手形を持ち、アメリカへ向かって出発した。一度踏みはずしたテ
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