の人を告発し捕縛させ、その捕縛に乗じてパリーにやってき、偽署をしてラフィット銀行から――この事実はその銀行の出納係から直接に聞いたことだ――マドレーヌ氏のものである五十万以上の金額を引き出してしまった。そのマドレーヌ氏の金を奪った囚人というのが、すなわちジャン・ヴァルジャンである。またも一つの事実についても、僕は何も君から聞く必要はない。ジャン・ヴァルジャンは警官ジャヴェルを殺した。ピストルで殺した。かく言う僕がその場にいたのだ。」
 テナルディエは厳然たる一瞥《いちべつ》をマリユスに投げた。あたかも一度打ち負けた者が再び勝利に手をつけ、失っていた地歩を一瞬間のうちに取り戻したかのようだった。しかしまたすぐに例の微笑が現われた。上位の者に対しては、下位の者はただ気兼ねした勝利をしか持ち得ないものである。テナルディエはただこれだけマリユスに言った。
「男爵は、何だか筋道が違っていますようですが。」
 そう言いながら彼は、時計の飾り玉を意味ありげにひねくってそれに力を添えた。
「なに!」とマリユスは言った、「君はそれに抗弁するのか。それは実際の事実だ。」
「いえ、譫言《うわごと》みたいなも
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