は今にまだ支払われていないこと、それに彼は屈辱を感じていた。そしてまた、テナルディエに対して複雑な精神状態の中にありながら彼は、大佐がかかる悪漢に救われた不幸について、返報してやる所がなければならないように考えられた。しかしそれはとにかく、彼は満足であった。今や、かかる賤《いや》しい債権者から大佐の影を解き放してやる時がきたのだった。負債の牢獄《ろうごく》から父の記憶を引きぬいてしまう時がきたのだった。
 そういう義務のほかに、彼にはも一つなすべきことがあった。もしできるならばコゼットの財産の出所を明らかにすることだった。今ちょうどその機会がきたように思われた。テナルディエはおそらく何か知ってるに違いなかった。この男を底まで探りつくしたら何かの役に立つかも知れなかった。で彼はまずそれから始めた。
 テナルディエはその「いい代物《しろもの》」を内隠しにしまい込んで、ほとんど媚《こ》びるようにおとなしくマリユスをながめていた。
 マリユスは沈黙を破った。
「テナルディエ、僕は君の名前を言ってやった。そして今また、君のいわゆる秘密、君が僕に知らせようと思ってきたものを、僕から言ってもらいたい
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