いた。並みはずれの体格を持ってる者には、気の毒なわけだった。たとえば、政治家の服装はすっかり黒ずくめで、従って適宜なものであったが、ピットにはあまり広すぎ、カステルシカラにはあまり狭すぎた。この政治家[#「政治家」に傍点]の服は、取り替え人の目録の中には次のように指定されていた。それをここに書き写してみよう。「黒ラシャの上衣、黒の厚ラシャのズボン、絹のチョッキ、靴《くつ》、およびシャツ。」欄外に、前大使[#「前大使」に傍点]としてあって、注がついていた。その注をも写してみよう。「別の箱にあり、程よき巻き髪の鬘《かつら》、緑色の眼鏡、時計の飾り玉、および、綿にくるみたる長さ一寸の小さな羽軸二本。」それだけで前大使たる政治家ができ上がるのだった。その服装は言わば衰弱しきっていた。縫い目は白ばんでおり、一方の肱《ひじ》にはボタン穴くらいの破れ目ができかかっていた。その上、上衣の胸にボタンが一つ取れていた。しかしそれは何でもないことだった。政治家の手はいつも上衣の中に差し込まれて胸を押さえてるものであるから、ボタンが一つ足りないのを隠す役目をもするわけだった。
もしマリユスが、パリーのそうい
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