》にかけて置いた。そういう首つり台はいつ見ても快いものである。
 一週間過ぎたが、その間ジャン・ヴァルジャンは室《へや》の中さえ一歩も歩かなかった。彼はいつも寝たままだった。門番の女は亭主に言った。「上のお爺《じい》さんは、もう起きもしなければ、食べもしないんだよ。長くはもつまい。何かひどく心配なことがあるらしい。私の推察じゃ、きっと娘が悪い所へかたづいたんだよ。」
 亭主は夫《おっと》としての威厳を含んだ調子でそれに答えて言った。
「もし金があれば、医者にかかるさ。金がなければ、医者にかからないさ。医者にかからなければ、死ぬばかりさ。」
「医者にかかったら?」
「やはり死ぬだろうよ。」と亭主は言った。
 女房は自ら自分の舗石《しきいし》と言ってる所にはえかかってる草を、古ナイフで掻《か》き取りはじめたが、そうして草を取りながらつぶやいた。
「かわいそうに。きれいな爺《じい》さんなのに。雛鶏《ひよっこ》のようにまっ白だが。」
 彼女は街路の向こう端に、近所の医者がひとり通りかかるのを見た。そして自分ひとりできめて、その医者にきてもらうことにした。
「三階でございますよ。」と彼女は医者に
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