すか。」
「ええ。もうすぐ五月です。」
「でも六月までは火を焚くものです。こんな低い室《へや》では一年中火がいります。」
「私はもう火はむだだと思ったのです。」
「それもあなたの一風変わったところですわ。」とコゼットは言った。
 翌日はまた火がはいっていた。しかし二つの肱掛《ひじか》け椅子《いす》は、室の端の扉《とびら》の近くに並んでいた。「どういうわけだろう?」とジャン・ヴァルジャンは考えた。
 彼はその肱掛け椅子を取りにゆき、いつものとおり暖炉のそばに並べた。
 それでも再び火が焚かれたので彼は元気を得た。彼はいつもより長く話した。帰りかけて立ち上がった時、コゼットは彼に言った。
「主人は昨日《きのう》変なことを私に言いました。」
「どういうことですか。」
「こうなんです。コゼット、僕たちには三万フランの年金がはいってくる、二万七千はお前の方から、三千はお祖父《じい》さんから下さるので、というんです。それで三万ですわと私が答えますと、お前には三千フランで暮らしてゆく勇気があるかってききます。私は、ええあなたといっしょなら一文なしでも、と答えました。それから私は、なぜそんなことをおっ
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