夜であった。生きたる恐ろしい闇夜であった。いかにしてその奥底を探ることをなし得よう。闇に向かって問いを発するのは恐怖すべきことである。いかなる答えが出てくるかわかったものではない。そのために曙《あけぼの》までも永久に暗くされるかも知れない。
 そういう精神状態にあったから、以来その男がコゼットと何らかの接触を保つということは、マリユスにとっては思うもたえ難いことだった。自ら躊躇してなし得なかったその恐ろしい問い、動かすべからざる決定的な解決が出て来るかも知れなかったその恐ろしい問い、それをあえて発しなかったことを、彼は今となってほとんど自ら責めた。彼は自分があまりに善良で、あまりにおだやかで、更に言えば、あまりに弱かったのを知った。その弱さのために彼は、不注意な譲歩をするに至ったのである。彼はその感傷に乗ぜられた。彼は誤った。きっぱりと簡単にジャン・ヴァルジャンを拒絶すべきであった。ジャン・ヴァルジャンはむしろ火に与うべき部分であって、彼はそれを切り捨てて自分の家を火災から免れさせるべきであった。彼は自ら自分を恨み、また自分の耳をふさぎ目をふさいで巻き込んでいったその情緒の突然の旋風を
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